日々綴り

徒然なるままに、適当に

人生で一番古い記憶

お題「人生で一番古い記憶」

 

「ばあちゃんきたよ」 

 「…」 

 

 これが僕にとっての一番古い記憶です。母方の祖母の記憶なのですが、僕にとっては雀の涙のほうが幾分多いと言えるぐらい、少ないのです。 

 

 祖母は僕が1歳半のときに、入院しました。大腸癌でした。もう既に転移し、子宮をも虫食んでいました。 

 

 県立病院というのに、案外、小さめの建物でした。でも、そのときの僕には当然、大きかった。とても巨大に見えた。まるで、大きな牢獄の中で、生きているかのようで、小さい僕は恐怖に包まれました。 

 

 最初は元気を装っていた祖母も、日に日に、元気を傍に置いた。何も言わない様な状態になったのです。  

 

 僕が2歳になった際、七五三を執り行った。ホントは三歳の時にするのだろうが、命の残り香が少ない、我が祖母に対してか、僕は晴れ着を着る事となりました。

 

 神社に行き、式と執り行いました。その後、病院に行った。幾分、病院は小さくなったかもしれない。エレベーターで上階に上がり、病室に入った。 

 

 北側の窓を眺めている祖母。そして、繋がった医療器具。 

  

 そのとき、僕の母がこう発した。 

 

「ばあちゃん、きたよ」 

 

そうすると祖母は、自分の体を重く動かし、こう答えた。 

 

「…」 

 

何とも綺麗な笑顔で。 

 

 これが僕の一番古い記憶です。 なんとも、変な話です。昨日の夕飯は?と聞かれても、僕は戸惑うだけ。なのに、雀の涙もない祖母の記憶は、はっきりと覚えている。なぜでしょうか。

 多分、あの時の笑顔がとても綺麗だったからでしょうか。

 学校の教科書にも、あまりに綺麗な笑顔があれば忘れないかもですね。